自然派ワイン、ナチュラルワインについてWine shop LUCYの考え

 

【自然派ワイン・ナチュラルワインって何?】

 

お店をやらせて頂いているとよく頂く質問です。
結論から言ってしまうと、これに明確な定義はありません。

完熟した健全な果実を使う、天然の酵母で発酵させる、酸化防止剤は必要最低限に留める等々、代表的なポイントは幾つかあるのですが、自然派ワイン・ナチュラルワインというのはそもそも定義はなく、
あくまで流通や発信・認知のための言葉であるということです。
(もちろん分かりやすいので、私たちも使う言葉ですが。。。)

そこで私達が良く使うのがボジョレーの生産者、シリル・アロンソ(自然派ワインの父と言われる故マルセル・ラピエールの直弟子)の蔵に訪れた時に、ポツンと壁に掛かっていた上記のパネルです。

図の左端は所謂コンベンショナルなワイン。
1つ右にずれた緑のシールがビオ認証、実は世に言う「ビオ」とは2種類あって、こちらはビオロジックの認証。大まかにお伝えするなら有機農法の認証となり、鶏糞や牛糞などの有機肥料を使用することが前提となります。
そして中央、オレンジ色の認証がビオディナミ。
英語読みではバイオダイナミックスと呼ばれる農法なのですが、オーストリア人のルドルフ・シュタイナーによって提唱され、ビオロジックに月の満ち欠け(引力)からの影響を加えた農法のことを指します。(同じくとても大まかですが)

そして、右から2番目。AVNと書かれた紫色の認証はアソシエーションヴァンナチュールという認証で、時代と共に修正が加えられていますが(現在詳細は非公開)一説によるとブドウを他所から購入しただけでNGが出てしまうとか、、、この文章を書いている時点で14の限られた蔵しか加盟出来ていないとんでもなくストイックな認証です。

そして右端、 S .A .I .N.Sの文字がヴァン・サン。
ブドウ以外何も加えていないという証明となります。

この表で着目したいのが、実はボトルに表記してある白い文字。
左に行けば行くほどその数が増えているこれが、それぞれのカテゴリーで許可されている添加物の数なのです。

一概に自然派ワイン・ナチュラルワインを定義するつもりも有りませんし、身体に良いとか悪いとかを語るつもりも毛頭ありませんが、一つの基準として分かりやすいのかな?と考えています。
(付け加えるなら、味への影響などは論外。実際にはもちろんありますがナチュラルだから美味しい、コンベンショナルだから不味い、などの議論は不毛で、私達も単純に美味しいワインが好きです)

そのようにある程度の共通認識はありますが、人によって感じる部分に任せる部分も多いにあります。
実際私たちも、「自然派ワイン・ナチュラルワインです」と言われて、試飲したら『???』と思うこともありますが、それを否定することはありません。

上記の様な状況から、私達が最も厄介だな、と思う事象はマーケティング目的でビオワイン・オーガニックワインを名乗る商品です。

そもそも、ワイン作りには大きく分けて2つの「栽培」と「醸造」という工程があります。上記の2つはその加工まである程度基準を設けていますが、世にゴマンと存在するビオやオーガニックの認証というのはあくまで「栽培」の基準であることが多く、その場合醸造過程に置いて何かしらの基準を持っていないことが少なくありません。
誤解を恐れずに言うならば、安価で工業的なビオワイン・オーガニックワインと呼称されているものは、生産者の思いというより、販売目的である商品であることも少なくないのです。

では、一体どうやって見分けたら良いのか?
一番は、信頼出来るお店とスタッフに出会うことが最良の道だと考えています。何故なら、こうした生産者の思いまで深入りして、情報のないまま商品を選ぶことは非常に困難だからです。
そして、認証とは少なからず生産者側に金銭面を含めた負担を強いることになる側面も忘れてはなりません。
その認証を取る為になけなしのお金を使うなら、自身のワインで証明したり、その分をより品質の向上に使おうと思うのも自然な流れで、実際に、認証には興味ないけれど素晴らしく自然でナチュラルなワインを生み出している生産者も少なくありません。

私達はこうした生産者の想いを皆様にお届けするのが使命だと考えています。

余談ですが、2020年にフランスで
ヴァン・メトード・ナチュール(Vin Méthode Nature)という憲章が始まりました。
分かりやすくいうと基準が曖昧なので、
うちの団体でこれが自然派ワイン・ナチュラルワインだよって決めたんです。
これがないから自然派ワイン・ナチュラルワインではないっていう訳でもないんですが、一つの基準にはなるかなと、個人的は思ってます。
フランスも試験的に認めているようですし。

ちなみにこんなマークです。

 

なので、この後は私たちが自然派ワイン・ナチュラルワインというものを
どう思って選んでいるか。という物だと思って、お読み頂けると幸いです。

では、どういう所で思っているかというと、一言で味です。
要点を絞るなら、上記にも挙げましたが、
ブドウ・酵母・添加物だと思っています。
ここらからはそれぞれについて書きます。
上記と被ってしまう部分もあると思いますが。。。

           

まずブドウですが、端的にいうとナチュラルで健全に熟していること、これに尽きます。
ただよく聞くオーガニック認証やビオディナミ、ビオロジックの認証を取ってるもの!という訳ではありません。
もちろんそういった認証も大事なのですが、認証団体に加盟するには費用が発生する事も見落としてはいけません。
認証にお金を掛けるなら、その分売価を下げて飲む人に還元したい、そう純粋な思いで、取ってはいないけど自然に寄り添った栽培をしている人も沢山います。認証よりも葡萄の味が素直に感じられるか?
身体に染み込むのか?ここだと思っています。

次に酵母。
これは自然酵母や野生酵母と呼ばれるもので発酵させたものです。
一般的なワインは人工的に増やした、培養酵母(コマーシャル酵母)という物を使います。
これが悪いという訳ではなく安定的に発酵を促して、汚染臭である硫化水素の発生を防ぎます。ただ培養酵母だけで造ろうとすると、
添加物の話にも繋がってくるのですが、しっかりと培養酵母に働いて貰うために他の酵母を薬品で無くして発酵させることになります。
即ち、目指した目標に沿った酵母だけを使うと言う事は、化学で解明仕切れていない、その他幾万の酵母の働きを否定してしまう事にも繋がるのです。
更に、この時に使う薬品によって、ワインの味(正確には酒質)が変わってきてしまうと思っています。


ちなみに、自然酵母で発酵させた後に、培養酵母で二次発酵させるというパターンもあり、一概に培養酵母を否定していると言うよりは、培養酵母で身体に染み込む滋味深さに触れた経験が無い、といった方が正確かも知れません。
醸造の技術と自然回帰により、昨今の進化は本当に目まぐるしいので、そんなワインの登場を心待ちにしている面も持ち合わせています。

最後に添加物。自然派ワイン・ナチュラルワインというと、
イメージ的に何も加えていないもの!と思われるかもしれませんが、
私たちにとってそれは絶対ではありません。
ワインの造り手にとって、何も加えないというのはあまりにもリスキーな事です。せっかく美味しくエネルギーに満ちたワインが出来ても、輸送や保管の影響でネガティブな変化が起こることがあります。
それでは造り手にとって、自分の子供のようなワインたちが残念です。
分かりやすく、よく聞くSO2(亜硫酸)もゼロで無いと
自然派ワイン・ナチュラルワインではない!と思われている方もいますが、
私たちはそうは思いません。
ネガティブな変化が起きないように、必要最低限の使用は全然ありです。
旅に出る子供に持たせる御守りみたいなものですね(笑)
ちなみにSO2は気体の二酸化硫黄であり、
これがワインに溶け込んで水溶性の酸になると亜硫酸。
そしてこれが中和された時に出来る塩が亜硫酸塩といいます。
状態によって呼び方が変わるので、裏エチケットに書いてある文字は多少違いますが、効果は一緒です。

ただ、未成熟や欠損した果実を省かずに収量を減らさない=売上を落とさないために様々な添加物で味を作り上げたワイン。
例えるなら不必要に厚化粧な子には心がときめかない、という事なのです。

じゃあ、結果何が自然派ワイン・ナチュラルワインなの?
って思うかもしれませんが、
私たちの思う所、人と自然だと思います。
自然のエネルギーが感じられ、ブドウ・ワインを作った人の
自然環境や自然サイクルに寄り添っていることをワインから感じられる様な。
そんなワインだと思っています。

その為に選ぶワインは極力テイスティングをし、それを確かめています。
届いてから店頭に出す際も、数日休ませてから出すようにして、
生産者さんからインポーターを通して預かった大切なワインを
最後の飲む方にしっかりと届けることを大事にしています。